脱炭素に貢献するためにイベント分野ができること(2021/7/14)
近年、ニュースでよく取り上げられている「脱炭素」。日本の政府が「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現することを目指す」という目標を掲げていて、多くの企業でもその重要性を理解し、取り組みが加速しています。
この潮流に対して、イベント分野がどのように取り組めば、二酸化炭素を削減する目標に貢献できるか、Positive Impact Events[1]代表のフィオナ氏にインタビューを行ないました。
Q1:イベント分野におけるベスト・プラクティスがあるのでしょうか。
A: イベント分野において、いろいろなベスト・プラクティスがあります。例えば、主催者が参加者へ公共交通機関を利用することを呼びかける、再生可能エネルギーを利用している会場を選ぶ、またはリサイクルされたものを多く再利用することなどです。
重要なのは、二酸化炭素の排出量を確実に測定するということです。なぜなら、イベント開催時または前後に測定することで、比較が可能となり、どのような削減の効果があるか分かります。
イベントで二酸化炭素の排出量を測定するために、カーボンオフセットの計画が必要となります。例えば、イベントに参加するため、参加者がどのような交通機関を利用するか、会場までの移動総距離などの情報が分かると、参加者がどのぐらいの二酸化炭素を排出するか、計算することが可能となります。
また、国際規格を利用することで(例えば、CDMゴールド・スタンダード[2]など)、全体的な二酸化炭素の排出量をカーボンオフセットすることができます。ただ、カーボンオフセットは、あくまでも最終的な手段です。可能であれば、準備の初期段階から排出される二酸化炭素を削減することが一番よい方法です。
Q2:どのようなツールを利用することができるでしょうか。
A: ここで、気候変動枠組条約(UNFCCC)により作成され、無料のカーボンフットプリントツールを紹介します。このカーボンフットプリントツールは、誰もが家庭や個人の生活におけるカーボンフットプリントを測定することができます。イベントに特化したものではありませんが、誰でもこのツールを使って、暖房や電気などのエネルギー消費と、飛行機や陸路による輸送をもとに、イベントのカーボンフットプリントを推定することができます。
イベント分野向けのカーボンフットプリントツールは、現在気候変動枠組条約(UNFCCC)が最終調整を行っていて、今年発表する予定です。このツールは、二酸化炭素、水の使用量、廃棄物などを含め、環境面のサステナビリティに焦点を当てています。
このツールについて、詳しくはこちら(英語)。
Q3:上記Q2のツールの他に、どのような基準(またはチェックリスト)に従い実施すれば、よりサステナブルなイベントを作ることができるでしょうか。
A: イベントはそれぞれ異なり、発生する影響も異なり、プロセスや組織構造なども異なります。そのため、チェックリストがすべてのイベントとして機能するとは限りません。イベントごとに異なる利害関係者が関与することを通じ、環境・社会・経済への影響を特定することが重要です。
ISO20121国際規格[3]を導入することで、すべてのイベントがサステナブルなものとなるよう、このプロセスを支援することができます(1つのイベントにしか使えないチェックリスト方式とは異なります)。
Positive Impact本部は、ヘルシンキの英国大使館の協力を得て、昨年にISO20121に関する無料のリソースを作成しました。このリソースは、ISO20121国際規格を第一者証明に導入する際に役に立つと思います。
詳しくは、こちら(英語)でご覧になってください。
[1]Positive Impact Events(本部:マンチェスター)は、イベント分野のサステナビリティ教育を行うイギリスの団体です。2014年、日本と世界を繋ぐ架け橋として国内外の最新サステナブルイベント事例や情報を発信していくため、当社内(サステナブルイベント研究所)で日本事務局を開設しました。公式のサイトは、こちら。
[2]ゴールド・スタンダードとは、CDM (クリーン開発メカニズム)や JI (共同実施)プロジェクトの「質」の高さに関する認証基準です。温室効果ガスの削減につながると同時に、持続可能な開発に貢献することを支援するためのツールで、クレジットの買い手に対しては、クレジットの「質」を保証するものです。(世界自然保護基金のサイトより)
[3]ISO20121国際認証とは、2012年6月15日に発行されたイベント関連規格です。サステナビリティに配慮したイベントマネジメントを行うためのツールとして、国際標準規格化されているISO規格です。