次なる未来へ向けたSDGsの最新潮流

2024年6月28日

2030年までに持続可能でよりよい世界の姿を目指し、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。採択されてから10年後の現在、世界はどう変わったのか、目標がどの程度達成できたのか、5月27日に行われた「日経SDGsフォーラムシンポジウム」で、登壇の慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授が語りました。

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SDGsをめぐる現状

2023年9月18日、4年ぶりの「SDGサミット」※[1]が開催されました。2023年は、2016から2030年までを実施期間とするSDGsの中間年にあたりますが、コロナ禍、戦争、気候危機などの複合的危機の影響があり、進捗が全般的に止まっている状態となっています。

国連の事務総長の演説では、貧困や飢餓、ジェンダー平等、教育、デジタル化などの課題として例を挙げ、現状のままだとSDGsが「取り残される」リスクが高い、と危機感を強調されました。

これからSDGsの進捗を加速させるよう、あらゆるステークホルダーが「継続的、根本的、変革的かつ急速な行動をとる」ことにコミットすることが必要となります。コロナ時代に急成長できたDX(ディジタル化)を活用することで、SDGsのそれぞれの目標の計測を可能にすることができ、また行動にも繋ぐことができていることを鑑みると、進捗を加速することに役立つことになるのでしょう。

SDGs達成に必要なトランスフォーメーション(変革)

2030年まですべての目標の達成は極めて厳しいですが、世界各地で変革が起こり始めています。2023年に発行された国連報告書「持続可能な開発に関するグローバル・レポート(Global Sustainable Development Report 2023)」※[2]で変革が起こる「Sカーブ」というモデルを提示しました。このモデルを参考にすることで、行動の現状を客観的に評価し、今後の見通しを考えることができます。

そのためには、政府、社会と企業の連携が必要となります。現在、日本国内で政府と企業が色々な活動に取り組んでいます。例えば、「地方創生SDGs金融フレームワーク」のようなSDGs認定や認証制度などを通じて、地域事業者のSDGs達成に向けた取り組みを見ることができ、地域金融機関と地域事業者の連携を促進すること、またSDGsを通じた地域金融機関等と機関投資家・大手銀行・証券会社等の連携を促進することもできます。SDGs達成向けにより加速できるでしょう。

「ポスト2030年目標」設定へ向けて

今年9月に国連の未来のサミット(Summit of the Future)で「2030年以降の目標」に関する議論を開始する可能性があり、2027年または2028年に、目標の交渉を開始するというような予測もあります。2030年以降の目標設定プロセスにおいては、既に達成に向けた様々な取り組みを行っている、90%を超えるSDGsの認知度(世界最高)となる日本は、これから世界をリードしていくでしょう。 

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現在、日経チャンネルで講演の録画を公開しております。興味のある方は、以下のサイトをご覧ください。

・サイト:https://channel.nikkei.co.jp/202405forum/24052704.html

※[1]SDGサミット(首脳級の持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム)は、 持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた国連の会議であり、4 年に一度国連総会の一環として 9 月にニューヨークで開催されます。SDGサミットでは、各国や国際機関、市民のリーダーがSDGsの進捗状況や課題、取り組みを報告し、協力や支援を促進します(https://www.dlri.co.jp/report/ld/270970.html)。

※[2]持続可能な開発に関するグローバル・レポート(Global Sustainable Development Report 2023)は、持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)における科学と政策の接点を強化することを目的とした国連の出版物です(国連連合広報センターにより)。

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