いまも活きるLONDON2012レガシーと、TOKYO2020レガシーへの期待(2021/11/1)
『いまも活きるLONDON2012レガシーと、TOKYO2020レガシーへの期待』
Positive Impact events 代表 Fiona Pelham
イベント業界にとってのLONDON2012レガシーは、そこから学ぶものが非常に多かったといえるでしょう。オリンピックという全世界的なイベントにおけるレガシーは全世界のイベント業界に多大な影響を与え、業界の本質を転換させるべく二つの要素がありました。
一つ目は、イベント業界におけるサステナビリティに関する唯一の国際規格であるISO 20121の創設です。当規格はLONDON2012のために編み出され、それによってイベントの計画段階からサステナビリティ対策が組み込まれ、イベントにおける其々の決断段階においてサステナビリティが考慮されている事を証明する方法を見出すことが出来るようになりました。その後さらにISO 20121規格はRio 2016、ゴールドコースト・コモンウェルス、TOKYO2020などの主要なスポーツイベントに採用されました。
これは、ほぼ間違いなく、イベント業界におけるLONDONオリンピックの最も重要なレガシーの一つであり、これによって現在、全てのイベント会社やチームは彼らのイベントの企画や決断段階においてサステナビリティ構想を組み込むために利用すべき公式な国際規格を持つことが出来たのです。
二つ目に、ロンドンオリンピックは新たな埋め立て地を作ることをせず、CO2の排出も極力抑えたイベントとしての実績を持ちます。ここでは、持続可能な(サステナブル)手法によって、発生したごみを全く埋め立てることをせず、更に40万トンのCO2の発生を防ぐことに成功しました。イベント業界においてロンドンオリンピックは、イベントにおいて持続可能な手法を取る先駆けとなり、持続可能なイベントをどのように行っていくかの先例を示した事となります。
しかしながら、持続可能なイベントの先例やISO 20121規格の創設にも関わらず、イベント業界は、先述のLONDON2012レガシーにさほどの影響を受けることもなく、その後もサステナビリティへの大きな転換を示すこともありませんでした。本来、イベント業界はサステナビリティ思考への完全な転換を為す事が必要だったのですが…。
実際にはISO 20121を取得する企業や団体は少なく、ロンドンオリンピック後、イベント会社はサステナビリティに向け進む手段が出来たにも関わらず、そこに大きな関心を寄せることもありませんでした。
ロンドンオリンピックのレガシーは、主に、競技場の跡地、経済発展、又イースト・ロンドンの再開発に重点を置いていたため、イベント業界内の思考の完全な転換を図ることまでは叶いませんでした。
イベントその物の見解の変化は、イギリスイベント業界のサプライチェーンの資質変換や、世界的なイベント業界に向けてのISO 20121規格やサステナブル構想、手法の教育によってこそ為しえたものかもしれません。
2021年現在、Positive Impact events(本部:英国マンチェスター)は、サステナビリティを推進し得るイベントのパワーやイベント業界の将来がどのように変わっていくかをイベント業界自体が理解する手助けを行っています。※
現時点では、まだTOKYO2020レガシーがどの様なものになるかに言及するのは時期尚早で困難です。TOKYO2020はサステナブルなイベントであることを示すと共にISO 20121規格により承認されていましたが、残念なことに、それだけでは日本、また世界のイベント業界の本質的な変換を成し得ることが困難であることはロンドンオリンピックの先例からも読み取れます。
その中でも、数あるであろうTOKYO2020レガシーの一つとして、広く一般人のサステナビリティへの関心の高まり、又、世界的なイベント業界における持続可能なイベントの成功例である事などが揚げられます。
もしも、TOKYO2020レガシーの一環として、この成功例のイベント後に、日本及び世界のイベント業界がサステナビリティに深い関心を寄せることになれば、イベント業界における根本的な思考の変換を促進することになるでしょう。その事はイベント業界が、よりサステナビリティに移行していく、又、イベント自体をSDGs促進に利用する為に必要でもあります。
<参考>
※本年10/20、11/4、11/8に開催される『The Road to COP26: Event Sector Transformation』キャンペーン
→(外部サイトに移動:Positive Impact 英語のみ)<<https://www.positiveimpactevents.com/>>
<<https://www.positiveimpactevents.com/events>>