人権と子どもの権利/イベントとの関わり(2022/3/4)

人権と子供の権利


「人権」とは、生まれたときから例外なくすべての人に与えられている基本的な権利と自由であり、尊厳、尊敬、平等、公平をもって人と接するための基本的なルールです。これは、第二次世界大戦後に採択された「世界人権宣言」の内容を基礎として条約化された国連の「国際人権規約」で成文化され、そのほとんどが世界各国の国内法にも組み込まれています。

 

一方、「子供の権利」とは、18歳未満の児童、青少年に対し、大人と同様一人の人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子供ならではの権利も含まれます

国連の「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。ユニセフは、「子どもの権利条約」が、条約の内容の実施に関する助言や検討などの専門的な役割を与えている国際機関です。1989年に「子どもの権利条約」が採択されて以来、5歳未満の子供の死亡率は低下し、危険な労働を強いられている子供の数も減少しました。しかし、こうした成果から取り残されている子ども達もまた数多く存在します。

こちらも又、条約を批准した各国の国内法の整備などを具体的に進めなければなりません。

社会全体が、将来を担う子供たちの人権を守り、彼らの健全な成長を促すことは、サステナブルな社会づくりにおける最重要課題の一つといえます。

 

人権は、国籍、人種、性別、宗教、能力、知的・身体的ハンディキャップの有無に関わらず、世界中のすべての人間に平等に認められるべきものであり、国連が2015~2030年にサステナブルな世界・社会づくりのために達成を目指す指標、SDGs17項目のうち、SDGs5「ジェンダー平等」SDGs10「人や国による不平等をなくす」SDGs16「平和と公正を全ての人に」に深く関わります。

 

 

人権とイベントの関わり

 

2019年、Positive Impact EventsはThe UK Committee for UNICEF (UNICEF UK)と協力し、人権と子どもの権利に配慮して企画するイベントを支援するためのリソースを作成することになり、これは、イベント主催者がイベントを企画する際に、セーフガードや救済策までを含む全ての人権と子供の権利に関する観点を考慮すべく教育資材であり、また、イベント主催者がISO 20121(※)を実施する際の一つのガイダンスともなります。

 

また、当団体は独自に、イベントプロフェッショナル がイベントを企画する際に、人権や子どもの権利に配慮するための教育資料を作成しています。

→(外部サイトに移動:Positive Impact 英語のみ)

Human and Child Rights Education Materials — Positive Impact | Be accountable for the future of human interaction (positiveimpactevents.com)

 

「人権や子どもの権利に配慮したイベントを企画する」と聞くと、多くのイベント関係者は、馴染みのない経験と身構えてしまうかもしれません。意外に思われるかもしれませんが

この中には、すでによく知られているものや、既に履行されているものも少なからず含まれます。

 

先述の教育資料の中では、人権や子どもの権利に配慮したイベントを企画する際の6つの主要なポイントを紹介しています。下記をご参照ください。

 

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1.人権と子どもの権利を尊重することを誓い、イベントにおいて子どもたちや社会的弱者の安全を確保する方法を見出す。

2.イベントを計画する際に、以下のような新しいプロセスを導入する。

イベント関係者との対話の時間を設け、参加者、従業員、ボランティアや地域社会の人々などのイベントによる生活への影響や予期せぬ被害を受ける可能性について考慮する。

3.イベント企画において、以下のような新しいプロセスを開発する。

イベントとそれを実現するためのすべての活動が人々及び、その生活に与える影響について考慮し、ポジティブな影響を最大化し、ネガティブな影響を最小限に抑える方法を見出す。

4.イベント企画において、参加者の多様性を確保するため、以下のような新しいプロセスを導入する。参加者のリストから、その多様性(例えば、様々な経歴、宗教、社会経済的な背景、出身など)を確認し、又、新たに、これまで招かれていない人々を招致するためのアクションを実施する。

5.イベントにおいて、全ての参加者が参加しやすいアクティビティを作成する。

性別に関わらず、有色人種やその他のマイノリティの人々、様々な異なる能力を持つ人々すべてが含まれているかを確認する。

6.人々が、懸念や苦情を申し立てたい時にどこに行き、何をすれば良いのかが分かる様な新しいプロセスを作る。新しい声に耳を傾け、そこから学び、修正する。必要であれば、謝罪をし、迅速に問題を解決する。強く信頼されるステークホルダーとの関係を構築する方法を模索し続ける。

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この6ポイントからも分かるように、イベントにおける人権に関する考慮は、イベントの開催時のみならず、その企画段階から、レガシーに至るまで常になされなければなりません。

特に忘れられがちなのが、ポイント6にある様な、人権が損なわれた、又は、人がそう感じた時の対応です。どんなに完璧を目指してもミスはあるもので、そこを修復し、改善し、原因を究明し、同じミスが起こらないような配慮や改善が必要です。

 

一つのイベントを作り上げるには、イベントの大きさや種類にもよりますが、実に多くの人や企業の協力、参加が必要です。中心的な存在でないところ、例えば、ケータリング、クリーニング、イベントに使う資材の製造、施工等において、労働環境が適切であるか、子供の労働がないか、性別や人種によって労働条件に格差がないか、等の細かい配慮から、イベントの準備期間、開催中、事後においても、万一、イベントに関わる人々の人権が侵害された、またはそう当人や周囲が感じた時に、必要に応じて、謝罪、保障などがなされ、イベント企画、主催側は、そこから教訓を学び改善をしていかなければなりません。

オンラインイベントが増加する昨今では、ネット上での個人情報の漏洩やプライバシーの侵害も、人権侵害に当たり、留意しなければならない重要な点です。広義では、テレビやネットでのイベントの視聴者もイベントの関係者と呼んでも過言ではなく、視聴者に子供がいる場合、放映内容が適切であるか、そうでない場合、視聴制限を設けるなどの措置も、子供の人権を守るうえで必要となります。

 

イベントとは、バーチャルであれ、リアルであれ、人と人とが集いコミュニケーションを取る代表的な媒体です。又、特に、スポーツや音楽関連のイベントは人々の興味を惹き注目を浴びます。おりしも北京冬季オリンピックが閉幕したばかりですが、この様な大きな世の中の注目を集めるイベントにおいて、出来る限り、人権と子供の権利が守られることにより、イベントそのものの価値が上がります。

その意味では、イベント業界は、他のSDGs指標とともに、人権にかかわるSDGs5「ジェンダー平等」SDGs10「人や国による不平等をなくす」SDGs16「平和と公正を全ての人に」の達成においても、他業界の先駆けとなるべく位置づけにあるといえるのではないでしょうか。

 

 

(※)ISO20121は、ロンドンオリンピック後に成立した、イベントにおけるサステナビリティを実践するための枠組であり、セレスポは日本で唯一、全社的にISO20121を取得している企業です。

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