Withコロナでのイベントにおける「食」について

2022年8月22日

現在、コロナ禍においても少しずつリアルイベントが復活しつつあります。

コロナの影響によりオンラインイベントの質の向上と共に、時間、労力、コスト、環境的負担(*1)の削減という利点が生まれた一方で、リアルイベントならではのコミュニケーション、イベントの雰囲気を楽しむ、他愛ない会話から生まれる貴重なアイデアや繋がり等が、改めて見直されています。

 イベントの種類にもよりますが、リアルイベントでの楽しみ、欠かせないものの一つに「食」があります。イベントの参加者が食事を共にしつつ、提供されるさまざまな食べ物、飲み物を味わったりすることで、より連帯感が生まれ、会話がはずみ、リアルイベントでこそ味わえる楽しさ、喜びが生じます。

 一方、イベントにおける「食」の提供は、サステナビリティの観点から、またコロナ禍の感染対策の面からも慎重に行われなくてはなりません。

 (*1)環境的負荷削減の具体例  

オンライン開催によって参加者が移動せずにイベント参加したことによるCO2削減率の見える化を実現する『グリーンメーター』による測定結果。

こちらは、環境保全に関する1データですが数値化されている物は多くはないのでひとつの例として挙げました。

他にも、オンラインイベントには、ゴミやフードロスの削減、イベントで使用される資材や、その廃棄により生じる粗大ごみの削減、焼却処理によるCO2削減など、幅広い環境面での利点があります。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000117.000047162.html〉より

これらについて、英国Positive Impact 本部代表のFiona Pelham氏からの寄稿文を以下に紹介いたします。

 

【Fiona Pelham氏より】--------------------------------------------------------------------------

 

食器や食材を含む食品供給は、一般的にはイベントにおいてサステナビリティに悪影響を与える分野ですが、効果的なイベント計画により、イベントのサステナビリティを高め、参加者に教育的洞察を与えることもできます。イベントでの食品提供で起こりうる主要な問題は、まず食品素材です。

もし、イベントのメニューが、その季節の、また地元の食材を使ったものでなければ、大きな二酸化炭素排出量の要因となり、そのイベントから非常に悪い影響を生み出すこととなります。次に、イベントで使用する食器類が使い捨てのプラスチックであれば、イベントからの廃棄物が増えるだけでなく、不要なプラスチックが増えることにもなります。

もしイベントのために持ち込まれ調理された食品の量が必要以上に多ければ、かなりの食品廃棄物が発生し、国連のSDGsにおける多くの指標に悪影響を与えることに繋がります。

パンデミック後、イギリスとヨーロッパのイベント分野がどのように変化していくかを期待しつつも、これまでを振り返ると、イベント部門における報告不足と、イベントが対面式に戻ったばかりであることから、パンデミックがイベント分野における食品提供に影響を与えたかどうかを語ることは難しく、現時点では、パンデミック後のイベントにおける食品提供がポジティブに変化しつつあるという実証はあまり見当たりません。

しかし、イベント会場ではコロナの拡散を防ぐため、使用後すぐに捨てられる食器などの使い捨てプラスチックが増加することが懸念されています。イベント会場ではゴミや不要なプラスチックが増えることとなり、これは、サステナブルなイベントを行うために我々が取り組まなくてはならない分野です。パンデミックの前後ともに、イベント分野は、食品供給を含むすべてのサステナブルな取り組みを促進する必要がありました。

ロンドンオリンピック・パラリンピックやグラスゴーのコモンウェルスゲームでは、非常にインパクトのある地元産のメニューや廃棄物ゼロのイベントの運営など、食料供給に関するサステナビリティ実践の例があります。しかし、これは小規模、また注目度の低いイベントには反映されておらず、コロナにより使い捨てプラスチックの増加に対する懸念が高まる中、Positive Impactは世界のイベント分野向けに、プラスチックの役割と扱い方やイベントでの二酸化炭素排出量の削減方法に関する資料を作成し、イベントプランナー向けに食品提供による悪影響を減らすための最善の方法と教育を提供しています。

詳しくは下記のリンクをご参照ください。

【Positive impactウェブサイト:英語のみ】

https://www.positiveimpactevents.com/resources/10-ways-to-reduce-your-events-carbon-footprint?rq=waste

https://www.positiveimpactevents.com/resources/addressing-the-role-of-plastic-in-the-event-industry

 

------------------------------------------以上-------------------------------------------------------

 

上記のPelham氏の寄稿文から、イベントにおける「食」の提供に関して、我々イベント業界が取り組むべき課題、課題の解決方法の一部が分かりました。
では、実際のイベントにおいて、現在、どのような取り組みが為されているのでしょうか?下記にいくつかの事例を挙げていきます。

 

例①:【ベルギービールウィークエンド】https://belgianbeerweekend.jp/yokohama/


今年で13回目となるベルギービールウィークエンドは、ベルギービール100種類以上を出店する他、ビールに合う料理の販売、音楽の生演奏などが行われます。初めに代替コインとグラスを購入し、以降は現金ではなくコインでやりとりをしますが、そのコインは土に帰る素材でできており、再使用も行いません。飲食をする側も提供する側も現金を触る必要がなく衛生的であり、代替コインの素材も環境に優しく、衛生面と環境面の両面で工夫がされています。 

また、ビールは購入した専用のガラス製グラスでしか飲めず、使用したグラスは次のビールを買う前にグラスリンサー(洗浄機)でしっかり洗浄し、原則、持ち帰りとなります。使い捨てカップではごみの排出による環境負荷に繋がり、繰り返し使う容器は衛生面に問題が生じますが、この方法でいずれの課題も解決することにも繋がっています。

 

 例②:【湘南国際マラソン】https://www.shonan-kokusai.jp/mybottle.html

 「世界中のマラソン大会で使い捨てカップとペットボトルを使わないようにすれば、将来のために、子供たちのために、地域のために、地球環境のために役立つのではないか」とイベントの公式Webサイトにあります。

2022年12月、湘南国際マラソンは世界で初の試みを行います。ランナーはマイボトルに水かスポーツドリンクを入れ、マイボトルとマイカップを携帯してスタートするのが湘南国際マラソンの新ルールです。

コース上には500ヶ所以上の給水ポイント(以前は使い捨てカップが大量に置いてある13の給水所だった)を設け、そこには水とスポーツドリンクの入ったジャグ(給水器) があり、マイボトルに補充、またマイカップを使ってその場で飲むこともできます。

この取組みにより、かつて、コース途中の給水ポイントに散らばっていた膨大な数の使い捨てカップ、水を運ぶためのペットボトルを削減することが出来ます。

 

例③:【学士会館/食から広がるエシカル・SDGsへの取組み】(食から広がるエシカル・SDGsへの取組み | Sustainable_MICE (res-express.jp)

学士会館では2016年から二か月に一度、「人と社会、地球環境、地域に配慮したエシカルという考え方」についての理解を深めることを目的に、朝食を交えながら講演を聞き議論する朝食会を行っています。メニューは、オーガニックやフェアトレード認証製品等エシカルな食材を使い創意工夫して考案されています。

また、こちらでは朝食会開催より以前の12年前より、日本全国の有機野菜生産者を応援するために「野菜の会」を毎月開催しています。有機野菜栽培は手間暇が掛かるにも関わらず、形が不揃いなものもあり、そうでない野菜より高価となります。しかし、農薬による環境や生産者、消費者の健康被害もなく、味も良い、という利点を多くの人々に伝えるために学士会館では、この取組みを続けています。 

他にも、「食とエコ」をテーマにしたイベントを、サステナビリティを考慮した食材を使い多数実施しています。また、定期的に子供食堂への無償協力も行っています。これらは、学士会館自身のエシカルな食材調達を通じてのSDGsへの取組みのみならず、イベント参加者にとっては、良い食材や生産者、匠との出会いを通してエシカル消費体験、サステナビリティへの意識向上に繋がっています。 

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ここに挙げた事例は、現代の「イベントにおける『食』」についてサステナビリティの観点、又、コロナ禍の現状を踏まえた上での物のうち、ごくわずかです。 

さまざまな環境保全の問題、コロナの感染対策と向き合いつつも、見直されつつあるリアルイベントにおいて、いかに課題を解決しながら、本来の「食」の楽しみである「美味しい」「楽しい」を実現していくか、「人々が笑顔で集い、一緒に美味しく食を楽しむ」その様な「食に関してもサステナブルな」イベントを、Pelham氏の文章内にもある一つ一つの問題と対応しつつ、増やしていくことが、我々イベント業界の使命ともいえるでしょう。

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